2025.11.30農林水産キャラバンおよび栃木県連鹿沼市支部タウンミーティング

「農政は崖っぷち、ハンター頼みは限界」徳永エリ参議院議員が熱弁
米価高騰とクマ被害、現場の悲痛な声に「国家の責任」強調

 

 立憲民主党栃木県鹿沼支部は2日、鹿沼市内でタウンミーティングを開催した。同党の「農林水産キャラバン」として、事務局長を務める徳永エリ参院議員(北海道選挙区)が登壇。「どうなる米の価格、どうするクマ対策」と題した講演を行い、党員・協力党員、地域住民や農業関係者ら約70人が耳を傾けた。

徳永氏は、記録的な米価高騰や全国で頻発するクマ被害について、政府の後手後手の対応を厳しく批判するとともに、党が掲げる独自政策「食料確保・農地維持支払制度」の必要性を訴えた。

主催者あいさつに立つ大貫毅県議

■ クマ対策「警察組織での対応が必要」
徳永氏は冒頭、鹿沼市粟野地区で11月23日に発生したツキノワグマによる人身事故に触れた。自身の地元・北海道でも400キロ級のヒグマが捕獲されるなど事態は深刻化しているとし、「かつては人を恐れていたクマが、人慣れし、餌を求めて市街地に降りてきている」と分析。これまで国会で、市街地での銃猟を可能にする法改正や指定管理鳥獣への指定を主導してきた経緯を説明した。

その上で、現在の駆除体制の脆弱さを指摘。「ハンターはあくまで趣味で免許を持っている民間人だ。命の危険がある駆除を、日当やわずかな報奨金、そしてボランティア精神に頼り続けるのは限界にきている」と強調。北海道の猟友会が自治体からの駆除要請を辞退する動きが出ていることにも触れ、「警察学校に専門課程を設けるなど、警察組織の中に公的な鳥獣対策の部隊を創設すべきだ」との持論を展開した。

■ 農業従事者25%減の衝撃
続いて農業問題について徳永氏は、「日本の農業は崖っぷちだ」と強い危機感を露わにした。農林水産省の最新データで、基幹的農業従事者が直近5年間で約25%減少し、平均年齢が69歳を超えた現状を提示。「4人に1人がこの5年で離農した。このままでは国民の食料を守れない」と警鐘を鳴らした。

昨今の「令和の米騒動」とも呼ばれる米価高騰については、単なる不作やインバウンド需要だけが原因ではないと指摘。単身高齢者世帯の増加によるパックご飯の需要増や、冷凍食品技術の向上による「冷凍米飯」の輸出拡大など、社会構造の変化による新たな需要を農水省が正確に把握していないことが、需給見通しの甘さを招いたと批判した。「米価は上がったが、30年前の水準に戻ったに過ぎない。長年、農家は赤字に苦しんできた」と生産者を擁護し、消費者に対し「適正価格」への理解を求めた。

その解決策として徳永氏は、立憲民主党が掲げる「食料確保・農地維持支払制度」を提案した。これは従来の「農家の赤字補填」という文脈ではなく、国土保全や食料安全保障の対価として、農地に直接支払いを行う制度だ。水田には10アールあたり2万3千円、畑には1万5千円などを交付し、既存の農水予算とは別枠で約1兆2千億円の予算確保を目指すと訴えた。

基調講演する徳永エリ参議院議員

■ 会場から噴出する怒りと不安
講演後の質疑応答では、会場の農業者や市民から、国の農政に対する積年の不満や不安が噴出した。
地元の稲作農家の男性は、マイクを握りしめ、「農水省の指示に従って多額の借金をし、水管理の設備投資をしたのに、翌年には補助金が切られた。ハシゴを外されるような政策ばかりだ」と憤りを隠さなかった。さらに、米の流通コストについて「トラック1台で運んでも数百円のコストのはずが、流通経費の名目で中抜きされているのではないか。農家は食い物にされている」と厳しい口調で指摘した。

また、別の参加者からは食料安全保障の根本を問う声も上がった。「台湾有事などでシーレーンが封鎖されれば、肥料も入ってこない。備蓄米も1カ月分程度しかない中で、本当に国民を養えるのか」と懸念を表明。さらに、「スーパーの現場では大量の食品ロスが出ている。作りすぎの側面もあるのではないか」として、生産だけでなく流通・消費のあり方を見直すべきだという意見も出された。

別の男性からは、社会保障制度への言及もあった。「国民年金だけで生活できず、生活保護を受けざるを得ない高齢者が増えている。車がないと生活できない地方で、車を持つなら保護を受けられないという運用は人権侵害ではないか」と、農業問題の背景にある地方の貧困化を訴えた。

■ 生産者と消費者の分断を越えて
こうした会場からの悲痛な声に対し、徳永氏は一つ一つ丁寧に回答。「流通経費の不透明さは確かに問題だ。農家手取りを増やす仕組みが必要」と同意した上で、輸入依存のリスクについては「政府は海外に港を作るなど輸入強化に走っているが、国内で再生産できる環境を作ることこそが最大の安全保障だ」と応じた。

最後に徳永氏は、「安ければいいという経済界の論理が、日本の農業をここまで追い詰めた」と総括。「生産者がいなくなれば、最終的に困るのは消費者だ。食べて支える、買って支えるという意識を共有し、共に農政の転換を求めていこう」と呼びかけ、会場は大きな拍手に包まれた。なお、当集会には松井正一鹿沼市長、福田昭夫衆議院議員、小池篤史県議会議員が来賓として参加した。

立憲民主党所属参加議員:大貫毅(栃木県議会議員)、舩生雅秀(鹿沼市議会議員)